恋愛詩の可能性/岡部淳太郎
 
てはこれは未来への希望だとか、そうした観念的なものを指しているとも読める。だが、この「蝶」を恋愛対象となった女性であると解釈することによって(あるいはそうすることによってのみ)、この詩は読む者に深い感銘をもたらすのである。
 話が前後するが、恋愛対象の女性を最後の方までまったく出さないというのは、非常に禁欲的な書き方である。恋愛という事件に巻きこまれている当人にとってみれば、こんな書き方をするよりも、その女性との恋愛の素晴らしさで全行を通したいだろう(その方が自分の気持ちに忠実である)。だが、詩としての強度を構築するためには、最低でもこのぐらいの仕掛けが必要になってくる。恋愛感情に溺れた自分をそ
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