恋愛詩の可能性/岡部淳太郎
 
いだろうか。
 この詩の面白いところは、単なる恋愛詩に終っていないところだろう。冒頭で「喚びかける よびいれる」と書いていて、さらにその後の展開を読んでいくと、この詩は恋愛詩でありながら一種の宗教的なムードも漂わせている。時折出て来る「フッフッと」という表現は、恋人に対する囁きや睦言であると同時に、宗教的なものへの参入の儀式のようにも読める。また、吉増剛造の詩に見られたのと同じく、わざと汚い言葉を使って現代詩的な雰囲気を構築している。「オッパイなんかあてどなく、/彫りおこそう クソッタレ」などという詩行は、恋愛詩を単なるラヴ・ソングの延長線上で捉えていたら絶対に出て来ない表現だろう。冒頭近くで「
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