恋愛詩の可能性/岡部淳太郎
 
とする、その究極の形を、僕は岡田隆彦の「史乃命」という作品に見る。


{引用=喚びかける よびいれる 入りこむ。
しの。
吃るおれ 人間がひとりの女に
こころの地平線を旋回して迫っていくとき、
ふくよかな、まとまらぬももいろの運動は
祖霊となって とうに
おれの囲繞からとほくにはみでていた。
あの集中した、いのちがあふれるとき、
官能の歪みをこえて、
おまえの血をおれは視た。世界をみた。しびれて
すこしくふるえる右、左の掌は、
おれの天霧るうちでひらかれてある。
おれは今おそろしい と思う。
飛びちらん この集中した弾みのちから!
愛を痛めるものを峻別するだろう
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