仄かな言葉/白石昇
った。
新しい学校は家からかなり離れているらしかった。そこに決めた理由は少しでもわたしの土地勘のある場所がいいから、というおかあさんの提案によるものだった。新しい学校は親戚の家の近くにあった。最初の一週間は電車におかあさんと二人で乗って鶴橋駅まで行き、その近所にある親戚のおばさんに手を曳かれて学校へ行った。
おかあさんとおばさんはわたしがひとりで確実に通えるようになるまでずっと、わたしの手を曳いて学校へ連れてってくれるつもりみたいだったが、わたしは四日程で学校までの道順とそれを正確にたどるための目印を把握してしまった。いつまでもついて来てもらっていては、新しい状況に慣れることができない
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