仄かな言葉/白石昇
るようで、今わたしの中に入っているかれの熱い部分がわたしの心臓になったみたいだった。わたしの中で確実に何かが毀れたような気がした。
軽い耳鳴りがした。わたしは自分の鼓動と、かれの鼓動が重なってゆくのを感じながら、いたい、と声に出しかけて、その、自分が発しかけた、い、という声を聞いた。足の間に感じる異物感が不思議に感じられた。
わたしは、
「動かないで」
とかれに向かって言う。わたしの声は大きくも、小さくもなかった。
耳鳴りはゆっくりと下腹部の痛みを伴った異物感と混ざり合うように小さくなってゆき、やがてゆっくりと消えてしまった。
わたしは内股に、一月以上前に感じたものと
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)