仄かな言葉/白石昇
った。変えなければならなかった。光どころか音声まで感じられなくなったわたしが勉強できる場所は限られていたからだった。
それはまるで住む国を変えることくらいに大変だと思ったのはおかあさんだった。わたしにとって、新しい場所へ外出することは、それほど大変な事らしかった。おかあさんはたいそう心配しているらしく、同じ事を何度も何度もわたしの掌に書いたが、わたしにはどう説明されても何がどう大変なのか良くはわからなかった。
耳が聞こえていた頃にはよく、科学者になりたい、と思った。科学的な原理や法則は、曖昧なところがない、わたしは曖昧でない事についてじっくりと考えることができたらいいと思っていた。音声
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