仄かな言葉/白石昇
 
くりとずれた。かれの手があった部分に熱い、湿った物体が蠢き始めた。かれの頭はわたしの足の間でなだらかに動き始める。
 わたしはかれの頭に手を置いて撫でながら、温度を持った部分が互いに引き合うのだ、と思った。わたしの身体の何処をなぞっていたときよりも、かれの舌や口唇は、今が一番、熱かった。

 ゆっくりとわたしの頭上にかれの頭が移動して、かれの両手がわたしの両肩を掴んだ瞬間、脚の間に激痛を感じた。痛みに反応してわたしは全身に一瞬だけ力を入れたが、痛みをこらえながらそのままゆっくりと力を抜いていった。
 今、自分が痛みを感じている部分を中心に、全身が強く脈打っていた。足の間に心臓がついているよ
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