仄かな言葉/白石昇
かれの腕を強く掴んだまま、かれの手から柔らかいクッションの上にわたしは落とされた。
わたしは自分が掴んでいるかれの腕を放さなかった。かれも一緒にこの温かくて柔らかい世界に落ちるべきだと思ったからだった。
わたしとかれは一緒に身体の力を抜いて、クッションに身を弾ませる。かれの身体に力が入り始めて、今、わたしの身体のあちこちに、かれの口唇が重なり始めた。わたしは、手の届く範囲でかれの身体をさすったり、撫でたり、触ったりした。わたしの身体からはゆっくりと力が抜けてゆき、かれの身体にはゆっくりと力が漲り始める。
かれがわたしの脚の間に指を落とし始めるとわたしは少しだけ身体を起こしてかれの脚
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