仄かな言葉/白石昇
 
る水の、跳ね返った飛沫に濡れてゆくかれの上半身を、ゆっくりと撫でた。水気を含んだかれの肌はいつにもましてつるりとしていた。
 わたしは、かれから渡された石鹸をかれの身体中に塗りつける。
 時々かれが思い出したようにわたしを抱きしめる。その度にそこだけ腫れたように熱を持ち堅くなった部分がわたしのおなかに当たった。その感触が、いい感じだった。わたしはそこを両手の平で包み込むようにして石鹸を塗った。
 わたしの掌の中で微かに動くその部分を触っていると、わたしはそれがわたしの掌に字を書いているような気がした。

 裸のかれと胸を合わせると、今まで感じたことがない温かさを感じた。身体中に小さい灯り
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