仄かな言葉/白石昇
げて、下に穿いていた服と、ショーツを脱いだ。
迷いはなかった。かれの右手は忙しくわたしの身体をじかに撫で始める。わたしが、そのかれの右手に自分の手を重ねたまま、もう片方の手でかれのシャツを脱がそうとすると、かれは少しだけわたしから身体を離す。
汗の匂いがした。わたしはなぞるようにわたしを引き寄せたかれの手に自分の手をかけながら、つるりとしたかれの背中に掌をあてた。
引き寄せられるがままに歩いて、とまった場所は浴室だった。
足の裏に感じるタイルの感触が冷たく堅い。
足元に、冷たい飛沫を感じた瞬間、ぬるめの水がわたしの身体にかけられた。わたしはわたしの身体にかけられている水
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