仄かな言葉/白石昇
 
感になった。特に指先はまるで、わたしを導く孤独な案内人だった。
 わたしが今、何処にいて、何をしなければならないのか、指先は確実に何かを探り当てて、その特性を認識することによって分析する。実際に認識しているのは頭なのかもしれなかったが、わたしにとってそんなことはどうでもよかった。わたしは、自分の指に脳が存在し、考えることを覚えたように思えた。

 わたしはわたしが持つ機能を最大限に使って、身の周りにあるほんのささやかなことだけ把握できれば、それだけで良いと思っていた。それ以上のことは求めようと思わなかったし、求めても無駄なことは最初からわかっていた。

 わたしは学校を変わることになった
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