仄かな言葉/白石昇
 
た。

 次の日、かれはいつものように公園でわたしの両肩に手をかけて現れた。わたしは箸で柔らかい白菜の感触を探り当て、隣に座ろうと動き始めたかれの方に向かってキムチをひとつまみ、差し出す。箸先にかれが食らいつく感触がわたしの手に伝わった。
 かれはしばらくいつものようにわたしがお弁当を食べ終えるまで、隣にちょこんと座っていた。時折、かれの腕が擦れるようにわたしの肩に当たる。少しだけバターの匂いがしたので、もしかしたらかれは、パンでも食べているのかもしれなかった。わたしは食べながら時折、わざとかれの腕を肘で何度かつついた。

 いつも通りのお昼だ、と思った。いつも通りのお昼であることが不思
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