仄かな言葉/白石昇
をわたしは感じる事ができる。
わたしは以前から極力、いろいろなことを自分でやりたい、と思っていた。ゆっくり、ちゃんと段取りを確認しながらであれば、料理だって作れると、わたしは思っていた。
しかし、危ないから、という理由でわたしが火や刃物を使うことは許されなかった。
おかあさんはいつもわたしに限られた事しかやらせたがらなかった。わたしが扱うことを許されていたのはコーヒーメーカーまでだった。
テーブルが微かに揺れた。おかあさんとかれが椅子に座ったらしかった。わたしのすぐ近くには、おかあさんの匂いがあった。かれはわたしから遠い位置に座ったようだった。
おかあさんの匂いと、少し
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