仄かな言葉/白石昇
加えたりした。
家に着くとわたしは、玄関に出てきて来たおかあさんとかれの手を互いに握らせた。後はおかあさんとかれが、音声でコミュニケーションを取るだろう、と思ったからだった。
それになんとなく二人が話す現場にいるのが恥ずかしい気がした。家の中でおかあさんとかれの匂いがゆっくりと混ざりはじめていた。
わたしはかれとおかあさんを置いたまま、ひとりで台所に向かった。いつもの場所に置いてあるメーカーのコンセントを探り、コーヒー豆を入れて水を注ぐと、スウィッチを入れた。そしてわたしはカップを三つ、用意してテーブルの、いつもの席に座った。この席にいれば、コーヒーが出来上がったときの湯気をわ
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