仄かな言葉/白石昇
う書いた。かれの書くひらがなが、すぐに言葉となってわたしの内部に浸透する。わたしはすぐにかれの言葉に答えようとして、メモ帳を手に取る。
身体から、言葉が溢れ出る感覚がすごく楽しかった。かれの言葉を身体中で感じているような気がして嬉しかった。
日曜日、公園で待ち合わせてわたしはかれをわたしの家へと導いた。いつもとは逆に、かれの手を曳いて歩くのは少し変な感じがしたが、すごく楽しかった。右手にステッキを持ち、わたしの左手とかれの左手を繋ぐ。かれは時折、とりとめもない言葉をわたしの背中に書く。わたしはその度に頷いたり、少しだけ後ろを振り返ってほほえんだり、かれの手を握っている手に強弱を加え
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