仄かな言葉/白石昇
 
での道を辿るのはとても楽しかった。

 わたしはかれの顔を触らせてもらった。

 かれの顔は、お父さんやおかあさんと違って、つるりとしていた。わたしはかれの年齢を訊いた。わたしと同じ歳だった。
 かれと会うようになってから二日に一冊、どんなに節約して書いてもわたしのポシェットに入っているメモ帳はなくなっていった。おかあさんはその度に新しいメモ帳を買ってきてくれたが、明らかなわたしの変化に、
《誰と話してるの毎日》
 と訊いてきた。
《ともだち》
 わたしはおかあさんが用意してくれた新しいメモ帳の一枚に、そう書いて渡す。
 その紙を受け取って、しばらく反応はなかったが、おかあさん
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