仄かな言葉/白石昇
 
たは誰?》
 とメモ用紙に書いた。

 かれの名前を聞くと、わたしは学校へ戻って普段通り午後の授業を受けた。だけど、できれば戻りたくなかった。わたしが訊く前にかれは、今度いつここに来るのかわたしに訊いた。わたしは、
《今日の夕方、四時半くらい》
 と紙に書く。わたしたちは再び会うことを約束し、別れた。

 わたしの生活は、その日から一変した。わたしは毎日、かれとお弁当を食べるために公園に行き、毎日四時半に待ち合わせるようになった。かれに手を曳かれて鶴橋駅前まで行き、おばさんにお弁当箱を返して電車に乗って帰る。そんな毎日が続いた。
 かれに手を曳かれて、ステッキをつくことなく駅までの
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