仄かな言葉/白石昇
 
事実をあらためて知ると、悲しくなって公園のブランコに揺られながら、泣いた。

 濡れた頬が風にさらされて冷たく、その感触が妙に心地よかった。

 授業は相変わらず面白かった。わたしはいろんな言葉を形作ってみんなとコミュニケーションを取った。わたしの意思は複雑なものであってもかなり正確に伝わるようになった。
 みんなは相変わらず、わたしの掌に言葉を書いたり、わたしの身体に触れたりして、好意的かつてきとうにわたしをあしらってくれた。
 適当が一番いい、とわたしは思った。わたしは《適当》と漢字で自分の掌に書いてみた。
 てきとう、とは適するに当たる、と書くのだ。それ以上でもそれ以下でもない
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