仄かな言葉/白石昇
とわたしの指の間を行き過ぎる砂を触ったり、周りの空気をすべて涼しい風に変えてしまうブランコに乗ったりして遊んだ。
小さい男の子は、わたしの手話による言葉を良く理解してくれたし、彼女はいつも優しかった。
わたしはそうして、新たに学校から公園までの道と、公園から鶴橋駅までの道を覚えた。
そうして彼女と公園を通って帰るようになって一ヶ月くらい経ったある日、彼女はわたしの掌に、
《来週、転校》
と書いた。
彼女はそれから何日か経って鶴橋駅の前でわたしの手を強く握りしめた。
それが、わたしが彼女の存在を感じた最後だった。その時を最後に彼女はわたしの周りから、気配と温度と
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