仄かな言葉/白石昇
まっていた。それらの知識は、それほど多いものではなく、少なすぎるような気さえした。だけど、まだわたしは、自分がまっすぐに歩いているかどうかを音声によるヒントに頼って判断しようとする傾向が、少し残っていた。そのせいで、歩いていて時折、不安になった。わたしは何度か道を横断したが、そのたびにわたしは近くにいる人の気配と匂いを探り当て、
《渡るタイミングを教えて下さい。》
と書いたカードを出し、教えてもらった。
それは、けっして渡るタイミングを掴み取れなかったからではなく、そうした方が、わたしの後ろにいるおかあさんが安心するだろう、と思ったからだった。
学校での授業は面白かった。
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