仄かな言葉/白石昇
て、おばさんがわたしの手をその温かい包みの上に乗せた。わたしはポシェットから紙と鉛筆を出し、メモ帳に左手をしっかりと添え、右手に持った鉛筆の先を突き刺すようにしっかりと紙の上に置いて文字を書いた。そうやって左手に感じる筆圧と筆先の位置をしっかりとイメージしながらでないと、ちゃんとした字は書けない。
わたしは、
《どうも有り難う。行って来ます。》
と書いておばさんに渡した。声を出すのがすごく煩わしかった。わたしはこの先自分がだんだん声を出さなくなるのだろうな、と思った。
音声はもうわたしにとって自分の言葉ではなく、使い慣れない外国語のようになってしまった、と思う。
自分で聴くこ
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