仄かな言葉/白石昇
る人達の発する音声で、わたしとその人達の違いを感じていた。それは音が聞こえなくなっても変わらなかった。わたしとその人達との間にある溝は、深かった。
わたしの耳が機能しなくなった今でも、わたしとその人達との間にある溝は、さらに深くなるというわけではないだろうと思う。他人から見たわたしは外見的には何も変わっていない筈だったからだ。しかしそう言った事を考えるのは無意味な事だし、そんな気がするのはわたしの思い過ごしにしか過ぎないのかもしれない。
わたしは少し被害妄想的にものを考えるようになった自分に気づき、心の中で苦笑する。
どっちにしたってわたしが他の多くの人達と同じになる事はま
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