仄かな言葉/白石昇
は、
《わたしは目と耳が不自由です。南巽方面行きの列車がホームに着いたら教えて下さい。》
と書いたカードをホームにいた乗客に見せ、教えてもらった。
わたしがステッキを弾ませながらホームを歩くと、他の人がよける気配が、まだ耳が自由だったときよりもはっきりと感じられるような気がした。
しかしそれは、もしかしたら、わたしの被害者妄想に近い感情から来るものかもしれなかった。
ホームに設置されている点字ブロックをなぞってゆけば乗車位置を確認することはできるし、入ってくる風の変化で電車が停車するタイミングは知ることもできる。
わたしは、明日からはせっかく作ってきたたくさんのカード
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