仄かな言葉/白石昇
び起こすものが、もうすでに音声ではなく、この点字や時折わたしに近い人間がわたしの掌に書く文字しかなくなったことを、そのときにあらためて感じた。
ふと、かなり明るくなってきた朝の日差しに意識を移す。あまりにも日差しが強くて、網膜が赤くチカチカする時には着けるが、わたしは普段サングラスは着けないことにしていた。それは、少しでも赤っぽい光を感じることができるわたしの網膜の感覚を大事にしたかったからだった。もし今後、わたしの視神経が、光が感じられなくなるのだとしたら、それが完全に暗黒の世界に埋没してしまうまで、わたしは少しでも、光の残滓を感じていたかった。
電車がホームに入るタイミングは、
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)