蛸。/仲本いすら
 
の言葉をきちんと聞き入れてるのか、聞き入れていないのかわからないが蛸は元宮の手にあるそれを目で追っている。
「おまえ、それを食べるのか。」蛸はまた、不機嫌そうに言った。
「食べるも食べないも私の自由だ。」ひょいと、口に運ぶ。
吸盤は気力を失い、つぱつぱと弱く元宮の舌に吸い付く。その感触を確かめながら、それを元宮は奥歯で磨り潰していく。
「やい、蛸。これからお前が一番嫌がることをしようと思う」
意地の悪そうな顔をしながら、元宮は蛸を指差した。
「やい、蛸。いいか、これからお前の足を十分刻みに斬ってゆく。」
「そんな事をして何になる?」
「何になるか、ならないかはお前には関係のないこと
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