死神と私 −夜霧よ今夜も−/蒸発王
いつのまにか路に迷っていました
今夜は月が無いぶん闇の周りが早く
足元には降り積もった夜が10センチほど積もっています
その夜闇に足を取られて転びました
瞬く間に夜霧が私を覆い周りが見えなくなってしまいました
私は何処へも行けなかったのです
じわりと滲む涙を無視して視線を泳がせると
目の前に白い足がありました
足だけで身体はありません
足はぴょんぴょんと跳ねて私を待っているようで
立ち上がるとひたひたと歩き出しました
足のあとを追ってどれほど歩いたことでしょう
路の明るさに目をあげると
先刻見た家の灯りで
ひたひたと歩く白い足の向こうには
死神が立っていました
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