死神と私 −夜霧よ今夜も−/蒸発王
 
した


死神は困った顔をしながら
短くあやまって
私の名前を呼ぶと
帰ろう とその薄い手の平を出しました


夜霧の足は
迷っている人を見つけると
本当に帰りたいところへ連れていってくれるそうです
くやしいけれど本当にその通りだったので
私は黙って死神の手を取りました


手を繋いで歩く帰り道
本当にこんな風で良いのです
明日のバージンロードを
こんな風に死神と歩きたいのです
それを死神が断るものだから
喧嘩になってしまいました
みっともなくなんてありません
死神は私の名付け親なのですから



“夜霧よ今夜もありがとう”


と音痴に歌う死神の手を強く握ると
6月の足音が聞こえるようでした





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