死神と私 −夜霧よ今夜も−/蒸発王
に見ぶきもしません
その人は私と目を合わせるとにこりと笑い
音も無く私の隣りに来ると
大人達に礼儀正しく一礼し
“こんばんは”
“死神です”
と名乗りました
名乗られて初めて大人達は死神が見えるようにになったみたいです
悲鳴を上げて怖れおののきました
死神は白い封筒に入った父の遺言状を掲げ
私の名付け親であるということ
遺言に従い残された子供を自分が引き取ることを伝えました
大人達は震えていて何も言いません
死神は軽く頷くと
私の名前を呼んで薄い手の平を差し出しました
その手を私は握ったのです
昔のことを思い出して歩いていたら
いつ
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