死神と私 −夜霧よ今夜も−/蒸発王
 
伸びています
そんな光に目が痛くなって
街の灯りの届かない裏路地に入りました
家を出てきたところで私に行くところなどないのです


両親が死んだのは私が5つの頃でした
理由は未だ知りません
ただ黒いワンピースを着せられて
長いこと二つの棺の前に座っていた事は覚えています
突然与えられた感情を『哀しみ』と名づける事もできない幼さでした
其の時
次々と喪服の黒で埋められていく空間で
場違いにも歌が聞こえてきたのです


“夜霧よ今夜もありがとう”


見ると参列者の一人が大きな声で歌を歌っています
とても大きな声でしかも音痴なのに
周りの大人達はその人の姿に見
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(8)