夜の情景/前田ふむふむ
直立する目覚める夜が、黒色の雨で高揚する。
行き場の無い雨の溜まり水を抱えて、
痛みに耐える打ちつけられた岩が、
侵食する季節の皮膚の性をむかえ入れる。――
慌ただしく夜の吐息が反転して、
無数の直線が疎らな点に変貌する。
時と共に、雨の形象が、崩れ去り、
崩れゆく時を呼吸する夜が、
燃えたぎる静寂の仄かな光の余韻を引きずり、
瑞々しい気配の抑揚を醸し出す。
眩暈をおこして墜落する雨が呼び込んだ、
微風の音は振り返らずに、
夜の塵に埋没して、
孤独な暗闇を逃走する一羽の梟が、
滑らかな時間を貪り食う。
食べ尽くされて白骨になった時間の欠落は、
薄い皮を蔽い、未知
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