いちにち/霜天
真夜中に目が覚めて
水道の蛇口をそっとひねると
そこから
海の匂いがする
喉が、渇いていたので
それでも飲み干すと
いろんないちにちが
搾り取られるように抜け落ちていく
冬の海はなにも言わないので
落ちていけば落ちていくだけ、どこへでも行けそうだ
昨日会ったはずの人が
今日も同じ顔でそこにいて
水色の服がとても似合っていた
その前の日も水色だった
顔を、上手く思い出せないので
とりあえず水色にしておいた
どこまでも繰り返していくと
空と同じ色になって見えなくなる
最初から空だったのかもしれない
抜け落ちていく、いちにちが
電話の一
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