いちにち/霜天
 
の一言目はいつも決まって
「どうだった?」
だった
何がどうだったのかなんて
いつだってどこにもなかった
「まあまあだね」
そこにそう答えていけば
そこからはなにもいらなくなる
曖昧に継ぎ接ぎを重ねていく
今日も、隙間だらけでよかった


真夜中の水道からは海の、匂いがする


その辛さはどこかやさしかった
抜け落ちたいちにちが、ゆっくりと
行ったり来たりを繰り返している
しっかりと思い出そうとするけれど
留めておける確かなことは
はらはらと揺れるだけだった

真夜中の水道からは海の匂いがする

満水になるまで飲み続けた後で
すっかりからっぽになった自分で
部屋をまっくらに、落として
じっくりと眠った
じっくりと、眠った



見たはずの夢を、なにも覚えていない
抜け落ちたいちにちで、辺りが水面になっている
またここから
乾かさないと、いけない
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