いちにち/霜天
の一言目はいつも決まって
「どうだった?」
だった
何がどうだったのかなんて
いつだってどこにもなかった
「まあまあだね」
そこにそう答えていけば
そこからはなにもいらなくなる
曖昧に継ぎ接ぎを重ねていく
今日も、隙間だらけでよかった
真夜中の水道からは海の、匂いがする
その辛さはどこかやさしかった
抜け落ちたいちにちが、ゆっくりと
行ったり来たりを繰り返している
しっかりと思い出そうとするけれど
留めておける確かなことは
はらはらと揺れるだけだった
真夜中の水道からは海の匂いがする
満水になるまで飲み続けた後で
すっかりからっぽになった自分で
部屋をまっくらに、落として
じっくりと眠った
じっくりと、眠った
見たはずの夢を、なにも覚えていない
抜け落ちたいちにちで、辺りが水面になっている
またここから
乾かさないと、いけない
戻る 編 削 Point(9)