「 双月譚。 」/PULL.
癒すためだとも、
蒼き彗星を弔うためだとも、
星達は噂した。
ふたつ月と、蒼き彗星。
ひとつ月がいた頃は、
天酒を酌み交わす友であった。
ふたつ月がいなくなり、
闇夜の綺羅を謳歌した。
星は舞い、
星雲は歌った。
幾夜も幾夜も、
綺羅の宴は続いた。
太陽があった。
太陽は不安だった。
あのふたつ月を追いやった、
星達に脅威を感じた。
いずれ彼星らは、
夜だけでなく、
この昼さえ、
支配したいと欲す。
恐怖だった。
奇襲は鮮やかだった。
いったん暮れたと見せかけ、
地平の果てに身を隠し、
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