「 双月譚。 」/PULL.
たつ月は、
なお昇るのを、
止めようとはしなかった。
千の星が落ち、
万の光芒が流れた。
最後に落ちたのは、
蒼き彗星だった。
闇夜が裂けた。
蒼き彗星の光芒は、
夜が明けたかのように、
眩しく眩しく、煌めいた。
天空を揺さぶる光波。
千年一夜の瞬、
蒼き彗星は砕けた。
この捨て身の一撃に、
流石のふたつ月も、
酷い手傷を負った。
それを見て、
傍観者だった星達は、
この機を逃さずと、
追っ手を差し向けた。
ふたつ月は、
翌の闇夜に紛れ、
大海の中へと沈み、
その身を隠した。
この失踪の理由を、
手傷を癒す
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)