「 双月譚。 」/PULL.
 
たつ月は、
なお昇るのを、
止めようとはしなかった。

千の星が落ち、
万の光芒が流れた。

最後に落ちたのは、
蒼き彗星だった。

闇夜が裂けた。

蒼き彗星の光芒は、
夜が明けたかのように、
眩しく眩しく、煌めいた。

天空を揺さぶる光波。

千年一夜の瞬、
蒼き彗星は砕けた。

この捨て身の一撃に、
流石のふたつ月も、
酷い手傷を負った。

それを見て、
傍観者だった星達は、
この機を逃さずと、
追っ手を差し向けた。

ふたつ月は、
翌の闇夜に紛れ、
大海の中へと沈み、
その身を隠した。

この失踪の理由を、
手傷を癒す
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