「 双月譚。 」/PULL.
な責めにも、
ふたつ月は動じなかった。
なにも謂わず。
なにも請わず。
毎夜を毎夜を、
昇り沈み、続けた。
これに激怒したのは、
蒼き彗星であった。
光弦の儀式。
帚星だけが奏でる、
千年一夜の幻妖旋律。
この年こそが、
千年一夜であった。
それを台無しにされたのだ。
蜂起した蒼き彗星は、
手勢の流星を従え、
堕月を迫った。
ふたつ月は、
無視した。
二夜の沈黙の後、
一つの星が落ちた。
ふたつ月に、
星が続いた。
幾星も幾星も、
かりそめの光芒を引き、
ふたつ月に落ちた。
それでも、
ふたつ
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