「 双月譚。 」/PULL.
そのひとつ月が、
いなくなったのである。
ひとつ月を慕っていた、
星達や太陽は、
その行方を心配し、
彼月の不在を嘆いた。
悲しみは涙を呼び、
大地に降り注ぎ、
大海となった。
兄月であり、
親月代わりでもあった、
ひとつ月が、
行方知れずになり、
その動向が心配された、
ふたつ月であったが。
案の定、
鬱ぎ込み、
雲の陰に隠れ、
姿を現さなくなった。
そうして、
幾夜が過ぎた後。
姿を現したのは、
孤月であった。
ふたつ月は、
ひとりになった。
残された、
ふたつ月は、
ひとり毎夜を、
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