月/葉leaf
一人娘の初潮の夜に妻の陰毛を焚くべしと伝えるが、それはせいぜい宇宙線の軌道を変えるくらいの効果しか持たない。
必要なのはサソリの死体だ。それも数百匹のサソリの死体。ひとつの生命はひとつの減速する世界(それは繊維状になっている)をその裏側に刻み込んでいる。サソリの死体はいわば世界の死体として、それぞれの世界の焦点を結んでいるのだ。
月に到達したいと望む者は、まず一人の人間を燃やし、その炎で次々とサソリの死体を燃やしていく。人間の世界繊維は強靭であり、そこに巻きつけ結びつけるように、次々とサソリの世界繊維を解放するのだ。
サソリの燃える短い時間、人はそこに編み込まれた世界を体感する。人は都
[次のページ]
戻る 編 削 Point(13)