月/葉leaf
 
して雀躍するとき、月は燃え立つ沈黙の中で彼の脳細胞を破裂させている。
 月はすべての存在の源泉である。都市の錆び果てた階段の陰にも、痼疾に苦しむ狢の内皮にも、そして私の妻の良く動く表情の背景にも、月は青々と焼け、金属色をした植物を閃々と繁茂させている。私の庭の梅の木は、月の喜悦が形象化したものであり、私をかつてとらえていた恋愛の感情は、月の嘆きが圧縮され、ふたたび軟化したものである。月の裏側には虚月があり、月は虚月を馥郁と存在させ、虚月は月をなめらかに在らしめている。

 月に到達するためには距離は意味を持たない。適切な時点というものもなく、その意味で数々の伝説は誤っている。ある伝説は、一人
[次のページ]
戻る   Point(13)