スティーヴ・ゴッドの短くも幸福な人生〜神業とかみさんの日々〜/クリ
 
を浮かべた。
「神よりも、俺自身よりも俺のことを知っている人物、それがかみさんだ。のろけてる? それはかみさんに会ってから言ってくれ」しかし…。

 しかし、彼の親しい友人の誰一人として、彼の「かみさん」の名前さえ知らなかった。
普通のアメリカ人ならば「my wife」とさえあまり言わないしましてや「my ol' lady」などという言葉も使わない。単純に名前を使うのが通例。
誰に訊いても彼の「かみさん」の名を知らなかった。訊ねると彼はただ「レイディーさ」としか答えなかった。そして誰一人、かみさんに会ったことのある者もいなかった。

 彼の「かみさん」は、彼の空想の中にしか存在しなか
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