雨になる前に/岡部淳太郎
の駐車場に出て泣いて
しまったのです雨は忘
れた頃にやってくるの
です降ってくるのです、
くるった時計を、
せめて巻き戻して
無名の歌を奏でましょう
歌が飛べずに
這ってしまったとしてもかまいません
流されなければよしとしましょう
流されなければ
私たちの体験は洗われずに
現われずに あるでしょう
――あの人は
美味しそうに召し上がりました
私たちも
死を召し上がりましょう
生といっしょに
雨になる前に
歌ってしまいましょう
本当は私は次の雨がや
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