雨になる前に/
岡部淳太郎
をくぐりぬける
――あの人は
その名において召し上がりました
何ひとつ 泣いてしまう理由などないのだが
雨はいけない
洗い流されてしまう
死のことも
生のことも
すべて洗われてしまったら
たまらない!
私は泣いていたのです
死んだ人のことを思っ
て雨のように泣いてい
たのですそれからしば
らく雨は降らなかった
のですがある日仕事中
に急に悲しくなったの
です自分の机を離れ裏
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