優しい世界/霜天
 
午後五時の夕日
五時半の灰色の空
六時には君が通り過ぎて
七時になると僕は溶けていく
物分りのいい振りをして
ただ諦めの、続いてしまう流れに乗っているだけで
嘘を、誰かのためと、ついていました
どこかの街で、目の前に差し出された開いた箱に
行き先も告げずに乗り込んでは
ただ上へ上へと押し上げられていく


いつも、どこかで
はぐれていかない景色で
ひとりにならない歌を歌っている
何十回と読んだ本の
結末が気になってしまうのは
遠くない人が、ただ笑うばかりだから
誰もいない
眠りから覚めたばかりの子どもの思考
そんなことも、どこにもない世界は
手が伸びれば、
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