月を想うように 君を想う/セキグチ アツ
 
月を想うように 君を想う。

こごえた空気に満たされた 閉塞空間に
一条の光が射す。

その光は 決して 
その こごえた空気を ぬくめることはなく
ただ そのさえざえとした空間に 朧な輪郭を与える。

そこにあるのは
わたしの ひえたつま先と
あなたの 冷たい指先だけ。

ゆっくりと 手を伸べて抽斗の中から出した
小さなガラス瓶は
中の色もわからない。

そのわからない色 を
ひえたつま先に 塗ってゆく。
灰色の 濃い色がつま先を覆ってゆく。

あなたがそれを見ているのか 月を見ているのか
どこも 見ていないのか わからない。

それを確かめるつも
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