この世の老人/大小島
、言葉につまった。なぜなら、妻とこうして過去の姿で、過去の時間で生きていたのに、こんな言葉が頭の中に出てきたからだ。
「どうしてって・・・僕が、今まさに死ぬ寸前だからだよ、この公園で。」
私は夢を見ているのかもしれなかった。
この体力の減った体で、脳だけが活発に夢を見せていたのかもしれない。しかしやっぱりあれは夢でもなく、思い出でもなかった。
「どうして?」今度は僕が質問をする番だった。
どうしてって、ほら、君の隣に、今まさに妻がいるからだよ。
僕は隣を見た。確かに、老人と同年齢くらいの老婦人が立っていた。照れたような、いま突然紹介されて、少し戸惑っているような笑みを浮かべてい
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