歌は聞こえるが先には進めない/あやさめ
誰かのタイピングの音だけが見えるように足踏みの先で
机と椅子の整列整頓された部屋の渋滞がいつも激しいと
日陰の窓際滑り落ちていく
指先の人形を口に咥えて
CDの外見をした円盤が空を飛び続ける
日めくりメモ帳片手に毎日を意味の欠けた落書きで埋めて
明日には遺跡のようになるという願いを持っている彼がいる
向かいからある人が足音を立てずに
ただ近づいてきて言うのだ
「明日にでも死んだらそこは遺跡になるだろうけどな」
でも彼はメモを書き綴る一生がやめられないに違いない
その明るさの中に沈んだ
水のない声だけを残して
歌が今日も響くのははっきり苦痛だとわかるという
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