歌は聞こえるが先には進めない/あやさめ
 
いう
──そのような言い伝えを守ることに
意味があったとしたら
今日も目の前に山ほど降りかかってくる雨を彼女はどう考える?

   だまって傘をさす,が正しい答えです

卵の黄身だけひっくり返して笑う
膝枕の間で眠りという記号も消えたら
歌のない音楽も死んでいく言葉だけ引き千切ってしまえば
彼と彼女の愛だとか恋だとかなんて誰も忘れてそっぽを向く

という大嘘の伝説と現実のその強かさと
空転するだけの頭と口と手足たち

その切り捨てた物体の中から聞こえる
歌はどこまでも同じメロディでいるわけで
ただ同じステップばかり踊らされている彼らは
今日も前には進めない行列たち


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