名作は天然である/岡部淳太郎
ば天然含有度が低いように見える(少なくとも一般の人からはそう見える)からではないかと思える。それと、近代詩は多少知っているけど現代詩はあまり知らないという人の中には、現代詩は頭で書かれていて心がないなどと誤解している人もいるかもしれないので、いちおう言っておくと、現代詩のわりと初期の詩には、天然の詩がまだまだあったのではないかと思う。田村隆一や吉岡実の初期の詩など、僕はけっこう天然だと思うのだが。だからこそ、田村の『四千の日と夜』や吉岡の『僧侶』などは、名作として語り継がれているのではないかと思う。ここまで書いて思いついたのだが、六〇年代ぐらいまでは、天然の詩が詩壇に入りこむ余地が多少残されていた
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