山/葉leaf
死するものの輝きがひとつの歪んだ戦慄のなかで遠景をひろげている、過去から届くさかだつ呼び声は次第に熱化して僕から幽石を焼き切ってしまう、僕は雨の中で生まれたのだろうかあるいは海の中であるいは問うことのできない場所で、尾根をつたう吐息のつめたい流線はひととき裏返ってしずかに鮮燿しはじめる、墜落しはじめる、僕の足裏には一足ごとに人々の深い欲望があつめられ僕はだんだん機械をはらんでゆく、幽石はヒトデの形をして太陽の内皮にふれたのだろうか綿となり心房で散華したのだろうか、「彼女は取り残された夏をあざやかに遺失した」という命題が僕の手の中ではばたきはじめる、岩から岩が生えてくるその生長点には一匹の青虫がいる
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