オリジナリティの範囲---片岡直子さんをダシにして/藤原 実
 
トリック』のなかで漱石について


「彼は、いちども《まことしやか》に書こうとはしなかった。言語という奇怪な疑似自然に心をゆだねるには、いつもその疑似性を逆手にとる手管をもってするほかはない、という事実を徹底的にどこかで承知していたからであった。言語に対する醒めた《わざとらしい》つきあいかたが、けっきょくは、反語的に《まこと》を造形する方法である---それを一貫して実行しつづけたたぐいまれな作家が漱石であった---。」


と書き、ついで「すべての言語認識=表現は《諷喩》なのだ! …と大声で言ってみたい」と主張しています。諷喩、すなわち、たとえばなしです。これらを言い換えると
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