thanks/霜天
 
目一杯に指を開いて
その間から覗く世界は
少しだけ明るすぎて
いつものように目を閉じていく
はらはらと花の散る道が
視界の端には、何処にでもあった



午前五時
空を埋める目覚まし時計の
からからと乾いた響く音
望んでいるはずもないものが
いつまでも残る耳鳴り
深い住宅街の海の底
泳ぐようにする、人たちの顔を見ながら


待ち合わせてくれる地下鉄に
深呼吸をする交差点に
乗り合わせた人の横顔を
いつまでも思い出すように


寒いといって服を脱ぐ
眠いといって走り出す
午後の夜、うつむいた窓
刺さりそうな星のこと
取り残された神社の裏で

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